お役立ちQ&A
令和5年度税制改正の概要(電子帳簿保存制度の見直し・暦年課税と相続時精算課税制度の見直し)
かわら版
~石井会計かわら版 令和5年3月号より抜粋~
【納税環境整備】電子帳簿保存制度の見直し
(1)電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件
①保存義務者が国税庁等の当該職員質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合の検索要件の全てを不要となる対象者は下記の通りになります。
1.その判定期間における売上高が5,000万円以下(現行:1,000万円以下)である保存義務者
2.その電磁的記録の出力書面の提示又は提出の求めに応じることできるようにしている保存義務者
②電磁的取引記録の保存を行う者等に関する情報の確認要件を廃止されます。
③令和6年1月1日以後行う電子取引の取引情報に係る電磁的記録について適用されます。
④電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存への円滑な移行のための現行措置は令和5年12月31日の適用期限をもって廃止されます。
(2)優良電子帳簿の範囲の見直し
① 概要
国税関係帳簿書類の電磁的記録等による保存制度について、過少申告加算税の軽減措置の対象となる優良な電子帳簿の範囲が変更になります。
② 現行
仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿(全て)
③改正
仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿
④具体例
(1)優良な電子帳簿の対象となる必要な帳簿の例
売上帳、仕入帳、経費帳(賃金台帳を除く)、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形、記入帳、貸付帳、借入帳、固定資産台帳、繰延資産台帳等
(2)優良な電子帳簿の対象とならない必要な帳簿の例
現金出納帳、当座預金出納帳、固定資産繰延資産以外の資産台帳
【資産課税】暦年課税と相続時精算課税制度の見直し
(1)生前贈与の加算期間延⾧
①概要
相続開始前に暦年贈与により取得した財産について、相続税額の計算において相続財産に加算する期間を、現行の相続開始前「3年以内」から「7年以内」に延⾧されます。
ただし、相続開始前3年超7年以内に贈与した財産については、その期間の合計100万円までは相続財産に加算されません。
~加算期間延⾧の4年間に贈与者Aから600万円、贈与者Bから400万円の贈与の場合~
相続税の課税価格への加算額 ○贈与者Aに係る相続税の課税価格への加算額600 万円-100 万円= 500 万円
○贈与者Bに係る相続税の課税価格への加算額400 万円-100 万円= 300 万円
⇒贈与者A・Bの各贈与のそれぞれで100 万円を控除
②適用時期
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。贈与をした年と各年の加算対象年数は下記の通り(経過措置あり)。
贈与をした年 加算対象年数
令和6 年~令和8 年中 相続開始前3年以内の贈与財産
令和9 年中 相続相続開始前4 年以内の贈与財産
令和10 年中 相続開始前5 年以内の贈与財産
令和11 年中 相続開始前6 年以内の贈与財産
令和12 年以降 相続開始前7 年以内の贈与財産
(2)相続時精算課税 基礎控除は各特定贈与者(*1)の贈与額に応じて按分
①概要
相続時精算課税制度では、相続税の課税価格への加算が不要の基礎控除額110万円が創設されます。ただし、同一年中に複数の特定贈与者から贈与を受けた場合には、この基礎控除額110万円について、各特定贈与者からの贈与額に応じて按分した金額が基礎控除額となります。
~按分計算方法~
110万×(各特定贈与者からの贈与額÷各特定贈与者からの贈与額の合計額)
~同一年中に特定贈与者Aから600万円、特定贈与者Bから400万円の贈与~
基礎控除額(相続税の課税価格 ○特定贈与者Aからの贈与に係る基礎控除額
への加算不要額) ・110 万円×(600 万円÷1,000 万円)= 66 万円
○特定贈与者Bからの贈与に係る基礎控除額
・110 万円×(400 万円÷1,000 万円)= 44 万円
相続税の課税価格 ○特定贈与者Aに係る相続税の課税価格への加算額
への加算額 ・600万円-66万円=534万円
○特定贈与者Bに係る相続税の課税価格への加算額
・400 万円-44 万円= 356 万円
⇒特定贈与者A・Bの各贈与に係る基礎控除額を控除・加算不要
②適用時期
令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る相続税について適用されます。
(*1)特定贈与者:相続時精算課税の選択をした相続時精算課税適用者に相続時精算課税適用財産を贈与した者のこと
詳細はこちら(PDF)からご参照ください。 ※新しいウィンドウが開きます
令和5年3月
税理士法人石井会計